2024/12/27
25歳で貯金はいくらあれば安心か|平均貯金額や増やすためのコツも紹介
執筆者:馬場愛梨(ファイナンシャル・プランナー)

25歳というと、社会に出て数年が経ち、仕事にも少しずつ慣れてきた頃かもしれません。まだまだ若いけれど、将来のことを考え始める大事な時期でもあります。そんな中、現時点でどれくらいの貯金があれば安心できるのか、目安を知っておきたいという人もいるでしょう。
この記事では、25歳の貯金額の平均値や中央値を紹介しながら、安心できる貯金額などをわかりやすく解説します。あわせて、今後必要になるお金や無理なく貯金を増やすコツについても紹介します。
「貯金」と「預金」の違いはお金を預ける金融機関の違いです。大きく下記2つに分けることができます。本記事ではどちらの場合も「貯金」という言葉を使って説明します。
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■25歳の平均貯金額はいくら?
周りの同世代の人はいくらくらい貯めているのか、気にはなっても直接は聞きにくいものです。ここでは、金融広報中央委員会が行った「家計の金融行動に関する世論調査」をもとに、平均値や中央値を見ていきます。
同統計には「25歳」といったピンポイントな数値がないため、20代・30代のデータを紹介します。
【20代】
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
預貯金額 |
75万円 |
- |
金融資産保有額 |
151万円 |
10万円 |
- (出典 : 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[総世帯]令和5年調査結果
」)
【30代】
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
預貯金額 |
287万円 |
- |
金融資産保有額 |
599万円 |
130万円 |
- (出典 : 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[総世帯]令和5年調査結果
」)
ここでいう「預貯金額」は、一時的に置いているだけの普段使い用や引落とし用のお金を除き、純粋に将来に備えるためのお金や運用資金として置いている金額を指します。また、「金融資産保有額」とは預貯金だけでなく、株や投資信託、貯蓄型の保険などの金融資産も含めた金額です。
なお、平均値とはデータの合計を単純に回答数(人数)で割ったものを指します。データ全体の傾向を把握するのには役立ちますが、突出して高い数値が含まれていると上振れしやすい特徴があります。
対して、中央値はデータを大きさ順に並べ中央に来る数値を指します。極端な数値の影響を受けにくく、平均値より実態に近い数値と言われています。
●平均貯金額は年齢とともに上がる傾向がある
前述の調査によれば、全年代の預貯金額の平均値は511万円です。若い世代ではまだ預貯金額が少ない人が多いのですが、年齢が上がるにつれて預貯金額や金融資産保有額の平均値が上がっていく傾向が見られます。
毎月少しずつでもコツコツと貯蓄をしていれば、年月とともに資産が増えていくでしょう。若いうちから貯蓄の習慣を身に付けている人とそうでない人とでは、後から大きな差になります。積み重ねが大切です。
●20代では貯金がない人も多い
前述の調査で20代のデータを詳しく見てみると、金融資産(将来のための預貯金や株、投資信託など)を持っていないと答えた人が42.2%にのぼっています。
30代~50代では30%程度、60代・70代は20%台前半なので、20代は特に金融資産を持っていない人が多い年代と言えます。
20代は、まだ就職して数年で年収が少ない人や学生も含まれているので、貯金が難しい場合もあるでしょう。「25歳で金融資産ゼロ」という人も珍しくありません。
■25歳の平均年収は? 年収別の平均貯金額も紹介
25歳の場合、平均年収はどれくらいでしょうか。国税庁が行った「民間給与実態統計調査」のデータを紹介します。
【平均給与】
20歳~24歳 |
267万円 (男性279万円、女性253万円) |
25歳~29歳 |
394万円 (男性429万円、女性353万円) |
全体 |
460万円 (男性569万円、女性316万円) |
- (出典 : 国税庁「令和5年分民間給与実態統計調査
」)
現状、平均給与には男女差があり、男性は50代まで年齢とともに給与が上昇していく傾向が見られますが、女性は20代後半から50代までおおむね330~350万円程度となっています。ただ、これらの数値はあくまで平均値なので、極端に高収入な人を除いた中央値で見るとより低くなると推察されます(この統計では中央値は公表されていません)。
年収が少ないと貯金がしにくいイメージがありますが、実際のところはどうなのか、年収別の貯蓄状況も見てみましょう。
年収 | 預貯金額 (平均値) |
金融資産保有額 (平均値) |
金融資産保有額 (中央値) |
金融資産非保有 の割合 |
---|---|---|---|---|
収入はない |
169万円 |
321万円 |
0万円 |
65.5% |
300万円未満 |
323万円 |
645万円 |
50万円 |
38.4% |
300~500万円未満 |
443万円 |
1,041万円 |
230万円 |
26.2% |
500~750万円未満 |
558万円 |
1,293万円 |
451万円 |
19.5% |
750~1,000万円未満 |
753万円 |
1,795万円 |
900万円 |
12.5% |
1,000~1,200万円未満 |
931万円 |
2,324万円 |
1,200万円 |
12.9% |
1,200万円以上 |
1,666万円 |
4,344万円 |
1,500万円 |
9.7% |
無回答 |
67万円 |
349万円 |
488万円 |
33.3% |
- (出典 : 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[総世帯]令和5年調査結果
」)
基本的には、年収が高いほど預貯金や金融資産が多い傾向が見られます。
ただし、年収1,000~1,200万円未満で12.9%、年収1,200万円以上で9.7%が「金融資産ゼロ」です。逆に年収が低くても貯蓄できる人もいるので、単純に「年収が高いから貯金できる」「年収のせいで貯金ができない」とは言い切れません。
■25歳でいくら貯金があれば安心できる?
同世代の平均的な貯蓄状況がわかって安心した人もいれば、逆に不安になった人もいるでしょう。では実際のところ、現時点でいくら貯めていれば安心と言えるのかを考えてみましょう。
●「生活費の半年分」がひとつの目安
安心できる貯蓄額として、まずひとつの目安になるのが「生活費の半年分」です。具体的に言うと、1ヶ月暮らすのに15万円かかる人なら、15万円×6ヶ月=90万円です。
生活費の半年分の金額を、いざという時にすぐ使える状態で用意しておけば、予期せぬ大きな出費があっても乗り切れる可能性が高くなります。
例えば、突然のケガや病気に見舞われたり、収入が下がったり、大きな家電が壊れたり、結婚祝いや出産祝いが重なったりと、予期せぬ出費は意外と身近にあります。貯金がない状態だと、これらの事態が発生した時に対応できないかもしれません。
もしもの時の備えとしての貯金は「生活防衛資金」とも呼ばれ、経済的に安定した生活を送るために欠かせないものです。一般的には「生活費の半年分」が目安ですが、収入が不安定な人やより安心したい人は「生活費の1年分」を確保しておくと良いでしょう。
●毎月手取りの2割を貯金に回せると理想的
もうひとつの目安は「手取り月収の2割」を貯蓄に回すことです。
手取り(税金や社会保険料を差し引かれた後の収入)が月20万円の人なら、月4万円ずつ貯金に回せると理想的です。難しい場合はまず1割(前述の例なら月2万円)を目指してみましょう。「余ったら貯める」のではなく、計画的に毎月一定額をコツコツ貯めていく習慣をつけていくのがおすすめです。
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」によれば、1人暮らしの20代・30代で金融資産を保有している人は、手取り年収のうち平均で14~18%を貯蓄に回しています。
■貯金に悩んだら今後の出費を予測してみよう
25歳の人は、これから結婚や育児、マイホームの購入などさまざまなライフイベント(人生上の大きな出来事)が待っているかもしれません。貯金の目的が見いだせない人や、貯金額をいくらにすべきか迷っている人は、今後かかるお金について想像してみましょう。
人生の中で特に多額のお金が必要になるのは、住宅資金・教育資金・老後資金の3つだと言われています。これらの費用の目安を紹介します。
●住宅資金
住宅金融支援機構の「2023年度フラット35利用者調査」によると、フラット35(住宅ローンの一種)を利用した人が家を購入するのにかかった費用の平均は、新築マンションで5,245万円、新築の戸建て(建売住宅)で3,603万円となっています。
家を買わなくても、実家から離れて暮らす場合は賃貸の家賃がかかります。
●教育資金
将来子どもが生まれたら、その教育にもお金がかかります。文部科学省の調査※によれば子ども1人にかかる教育費は、幼稚園から大学まですべて公立校に進学した場合は800万円、すべて私立の場合は2,000万円以上が目安です。
- ※文部科学省「令和3年度子供の学習費調査
」および「私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査
」
●老後資金
総務省の家計調査(2023年)によれば、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、毎月の支出(消費支出)の平均が約25万円、年金などの毎月の収入(可処分所得)の平均が約21万円となっています。
つまり、月4万円は赤字で、足りない分は貯蓄などを取り崩すことになります。単純に計算すると、仮に65歳から85歳まで生きた場合、月4万円×12ヶ月×20年=960万円が不足することになります。
■貯金を増やすためには何をすればいい? コツと対策
これから貯金を増やしていくためには何をすればいいのか具体的に見ていきましょう。ちょっとしたコツを押さえるだけで、格段に貯まりやすくなります。
●明確な目標を立てる
漠然と「いつかたくさん貯まったらいいな」と考えているうちは、なかなか行動に移せず実現が難しいものです。貯金が苦手な人は、何のためにいつまでにいくら貯めるのか、できるだけ具体的に目標を設定してみるのがおすすめです。
目標が決まったら、それを実現するために今から毎月いくらずつ貯めていけばいいのか逆算してみましょう。例えば、「5年後に車を買うために300万円貯める」という目標を立てた場合、1ヶ月あたり5万円(300万円÷5年÷12ヶ月)ずつ貯めていけば達成できます。
●先取り貯金を実践する
先取り貯金は、貯金の王道的な方法です。具体的には、収入が入ってきたらすぐに貯金分を別口座に移すことを指します。「余ったら貯める」ではなく、あらかじめ毎月の貯金額を決めて先に取り分けておいて「残った分で生活する」のがポイントです。
勤務先の財形貯蓄や銀行の自動定額入金サービスなどを使うと、毎月決まった日に決まった金額ずつ自動的に移動するため、手間がかからず便利です。
●毎月の支出を把握する
お金をうまくコントロールできるようになるには、自分が何にいくら使っているのか把握することが重要。きっちりと家計簿をつけるのも良い方法ですが、難しい場合はメモ書きやクレジットカードの明細をチェックするだけでも大きな前進です。
「なぜかいつもお金がない」という人は、1ヶ月間の自分の支出をメモするなどして貯まらない原因を探してみましょう。「今月の反省はこれだ」「来月はこうしてみよう」など、自分の支出と向き合って振り返る時間を定期的に取れると理想的です。
●お金の使い道に優先順位をつける
服、食事、趣味など、お金を使いたくなる場面はたくさんあるかもしれません。しかし、あらゆるものに全力でお金を注ぎ込んでいたら、すぐに貯金が底をついてしまいます。かといって、何でも我慢ばかりではつらいでしょう。
日々の楽しみと貯金を両立させたいなら、お金を使うところと使わないところを明確に決めてメリハリをつけましょう。例えば、「今月は趣味にお金を使うからそれ以外は徹底的に抑える」などです。お金の使い道に自分なりに優先順位をつけることも大切です。
●収入を上げる努力をする
支出を抑えるだけでなく、収入を上げることも考えてみましょう。
たとえお金がかかったとしても、仕事に関するスキルアップや資格取得などの自己投資は長い目で見ると収入を増やすことにつながり、最初にかかったコストを十分回収できる可能性があります。場合によっては、副業や転職を検討しても良いかもしれません。
20代のうちに努力して身に付けたことは、その後の長い人生でも役立ちます。貯金や節約は大切ですが、若いうちはそればかりに熱心になるのではなく、将来に向けてさまざまな経験を積むことを重視するのもひとつの考え方です。
■まとめ : 若いうちから貯金を習慣づけよう
25歳は、まだ若くて収入が少ない人も多く、預貯金や金融資産がほとんどない人も多くいます。ただ、若いうちからコツコツと貯蓄をする習慣を身につければ、5年後・10年後の未来の資産額は大きく変わってくるでしょう。
将来のお金が不安なら、まずは手取りの2割を貯蓄に回し、半年分の生活費に相当する金額を貯めるのがおすすめです。この記事で紹介した貯金のコツを押さえて、ぜひ今から行動してみましょう。