2025/03/28
お金の勉強は何から始める? 初心者が学ぶべきことを徹底解説
執筆者:馬場愛梨(ファイナンシャル・プランナー)

現代社会を生きていくなかで、お金に関する知識は欠かせません。しかし「お金の知識には自信がある」と胸を張って言える人はきっと少ないです。
そのため「将来のお金のことが不安だから学んでおきたい」と考えても「何から始めればいいのかわからない」と戸惑ってしまう人も多いのではないでしょうか。
この記事では、お金の勉強とはどんなもので何をどうやって学べばいいのか、学んだことをどう実践していけばいいのかについて詳しく解説します。
■お金の勉強、何から始める?
「お金の勉強」と聞いて、どのようなものを思い浮かべるでしょうか。ひとくちに「お金の勉強」といっても学ぶ内容は多岐にわたり、学ぶ方法もさまざまです。お金の知識を身に付けるには、以下のようなさまざまな方法があり自分に合ったものを選ぶことができます。
【お金の勉強方法の例】
- Webサイトや動画で学ぶ
- 本を読む
- セミナーを受講する
- 資格を取得する
- 経済ニュースをチェックする
それぞれどんな方法でどう学ぶのか、ポイントを見ていきましょう。
●Webサイトや動画で学ぶ
現代は、スマートフォンなどを活用すれば無料で得られる情報がたくさんあります。お金のことに限らず普段からわからないことがあった場合は「インターネットで検索する」「YouTubeなどの動画サイトを見る」という人も多いのではないでしょうか。
Webサイトや動画、時にはSNSなどもいつでもどこでも手軽に学べる有力なツールとして活用できます。ただしインターネット上にある情報がすべて正しいわけではないので見極めは必要です。
例えば金融庁や金融経済教育推進機構では、お金について学べる教材を作成していてそれぞれのWebサイト上で公開しています。金融広報中央委員会の「知るぽると」や日本FP協会の「人生とお金の学校」などは初心者向けです。
●本を読む
お金に関する書籍も数多く出版されています。本や雑誌は、制作の過程で編集や校正などさまざまな人が関わっているため、誤った情報やわかりにくい表現が少ない傾向です。
例えば「初心者向け」「わかりやすい図解がある」といったものを選べば、知識が少ない状態でも学びやすいでしょう。書店へ足を運んで気になる本や雑誌を数冊選んでみることも選択肢の一つです。
書店には、新しい書籍が並んでいるだけでなく似たようなジャンルの本が近くに並んでいるので比較しやすくなっています。同じテーマの本を複数冊読めば、どの本にも書かれている特に大事なポイントや著者ごとに異なる見方をしている点などが把握できて理解がより一層深まるでしょう。
●セミナーを受講する
お金について学べるセミナーや講座に参加することも一つの方法です。近年は、オンラインで手軽に参加できるセミナーもあります。
例えば銀行や証券会社など金融機関が主催しているものから、自治体やカルチャーセンター、マネースクールなどが主催しているものまでさまざまです。費用は、無料のものから数千円、さらには数万円まで多岐にわたります。
ただしセミナーによっては、特定商品やサービスの宣伝に偏る場合もあるので注意が必要です。さらに主催者の経歴が信頼できなかったり、怪しい投資商材や情報商材を扱うセミナーも増えていたりするため、十分に注意しましょう。
セミナーは、専門家の講師から直接話を聞いたり質問したりできることがメリットなので主催者を精査したうえで活用しましょう。
●資格を取得する
お金に関する資格の取得を目指すのもよいでしょう。例えばファイナンシャルプランナー(FP)の資格は、お金の知識を体系的に幅広く学べるため人気です。
ほかにも簿記や証券外務員、税理士、社会保険労務士、宅地建物取引士など自分の興味・関心や学ぶ目的に合わせて選ぶのもよいでしょう。資格を取得できれば就職や転職、昇給などキャリアアップにも役立つ可能性もあります。やることが明確で達成感も得やすいので、学ぶモチベーションを維持しやすいでしょう。
●経済ニュースをチェックする
日々のニュースを確認することも勉強になります。「経済ニュースは専門用語が多いので難しく感じる」という人もいるかもしれません。
しかしわからないことが出ても都度調べていけば、次第に金融の仕組みや経済動向などに関する知識が身に付いていきます。そうなればニュースをより理解しやすくなり、さらに興味を持ちやすくなるでしょう。
テレビの経済番組や新聞、ニュースアプリやポッドキャストなどで最新情報に触れてみることも選択肢の一つです。
■お金の勉強をしたほうがいい理由(3つのメリット)
人は、意味や目的がはっきりしないことにはエネルギーを費やせないものです。なぜお金の勉強が必要なのかを考えてみましょう。
【お金の勉強をすることで得られるメリット】
- メリット1:お金に関する不安がやわらぐ
- メリット2:財産を失うリスクを減らせる
- メリット3:やりたいことの実現可能性が高まる
●メリット1:お金に関する不安がやわらぐ
正しい知識を身に付けることで将来に対する漠然とした不安を軽減できます。なかには「今後のお金のことがなんとなく心配」という人もいるかもしれません。
しかし「今後どんなときにいくら必要なのか」「いつまでにどれくらいどうやって貯めればいいのか」などが明確になれば将来の見通しを立てやすくなり不安感がやわらぐでしょう。
また計画的に貯蓄や投資を進めて十分な資産を作れたら、予期せぬ支出にあたふたすることがなくなり自信や余裕を持つことも期待できます。
●メリット2:財産を失うリスクを減らせる
金融リテラシー(お金に関する知識や判断力)が低いと「資産形成に関わる詐欺や悪徳商法などに引っかかる」「リスクが大きすぎる投資をして失敗する」などで財産を失う可能性が高まります。損したりだまされたりして悲しい思いをする事態を避けるためには、正しい知識が欠かせません。
「詐欺などから財産を守る方法」「堅実に投資する方法」「無駄な支出をせずに済む方法」などを知っておけば、お金に関するトラブルを回避しやすくなるでしょう。
●メリット3:やりたいことの実現可能性が高まる
「海外旅行に行きたい」「子どもを大学に進学させてあげたい」「移住したい」など、やりたいことを実現するにはお金がかかるものです。「理想の生活を実現させたい」「将来に向けた準備をしたい」といった場合にも、お金の知識が役立ちます。
知識を活かしてうまく資産形成ができれば将来の選択肢は大きく広がるでしょう。まとまった資金が必要になる夢があっても、あきらめずに済みます。
■最低限身に付けておきたいお金の知識とは
「どうやって学ぶか」も大切ですが「何を学ぶか」は、さらに大切です。しかしひとくちに「お金の知識」といってもその範囲はとても広いため、何から学べばいいのかわからない人も少なくありません。ここからは、最低限身に付けておきたいお金の知識を以下の4つに分けて紹介します。
- お金の使い方:将来設計
- お金の貯め方:家計管理
- お金の守り方:トラブル予防
- お金の増やし方:資産運用
まずは、上記のいずれかから一つ選んで学び始めてみましょう。
●お金の使い方:将来設計
お金の使い方には、その人の考え方や価値観が色濃く反映されます。自分のお金の使い方を振り返ると同時に、これから使うであろうお金についても考えてみましょう。将来やりたいことや理想の人生設計(ライフプラン)について考えることを「ライフプランニング」といいます。
ライフプランニングについて学べば、実現させるためには「いついくらお金が必要で今からいくら貯めていけばいいのか」など具体的な数字で考えて計画を練る方法がわかります。さらに将来必要になるお金の目安もわかるので未来を見通しやすくなり、安心感を得やすくなるでしょう。
●お金の貯め方:家計管理
「家計を無理なくやりくりする方法は?」「節約や貯金のコツは?」など日々頭を悩ませている人も多いのではないでしょうか。お金の貯め方(家計管理)を学べば、収入や支出を正しく把握して無駄を省き貯金できる状態に近づく方法がわかります。
特に「毎月赤字になってしまう」「全然貯金できない」という場合、最初は家計管理から学び始めるのがおすすめです。
夫婦での家計管理について詳しく解説したコラムもあるので合わせて読んでみてください。
また、1,000万円を貯金する方法を説明した記事もあります。貯金について詳しく解説しているので読んでみてください。
●お金の守り方:トラブル予防
お金をしっかりと貯めていても詐欺などに遭って全部取られてしまっては意味がありません。トラブルを予防するために「詐欺や悪徳商法に引っかからない方法」「引っかかってしまったときの対処法」「正しい金融商品を選ぶ知識」なども身に付けておきましょう。
違法な商品やサービスはもちろん、そうでなくても利用方法を誤ることで損失につながってしまうケースもあります。
例えば「自分のリスク許容度に合わない投資商品や保険商品を選んでしまう」「ローンやクレジットカードを利用しすぎる」といった場合です。適切な商品やサービスを選択するには、正しい知識が欠かせません。
●お金の増やし方:資産運用
資産運用を行えば、より効率的にお金を増やせる可能性があります。しかし「どんな商品でどんな運用を行うか」「どうやってリスクを抑えるか」など、あらかじめ知っておきたいことがたくさんあるので注意が必要です。
例えば、銀行預金と違って株や投資信託には元本保証がありません。元本保証とは、投資や金融商品の契約において、元本(投資したお金の額)が減らないと保証されていることを意味します。
また、株や投資信託など投資商品についての基礎的な知識だけでなくNISAやiDeCoなど投資に使える税制優遇制度についても知っておくとよいでしょう。
なお資産運用は、余裕資金(しばらく使う予定のないお金)で行うのが基本です。まだ余裕資金がない人は、前述した「お金の貯め方(家計管理)」や「お金の使い方(将来設計)」をマスターすることから始めましょう。
■お金の勉強をする際のポイントと注意点
最後にお金の勉強をする際のポイントや注意点について解説します。特に意識しておきたいのは、次の3点です。
- 年代や目的に応じて学ぶ内容を決めよう
- 信頼できる発信元から情報を得よう
- 机上の勉強だけでなく実践も大切
●年代や目的に応じて学ぶ内容を決めよう
学ぶべき内容は、年代や目的によって異なります。自分の興味関心がおもむくまま学んでみることも一つの方法です。しかし基本的には「何のために学びたいのか」「どんな悩みを解決したいのか」を十分に把握したうえで学ぶ内容を決めるとよいでしょう。年代や置かれた状況に応じて決めることもできます。
例えば「社会人になったばかりの20代」であれば家計管理や投資の基礎など、「老後が心配な50代」であれば年金制度の仕組みや退職金にかかる税金、受取ったお金の使い方などを学ぶといった具合です。30~40代なら住宅資金や教育資金、将来に向けた資産形成を学ぶのもよいでしょう。前述のとおり「お金の増やし方」を学ぶ前に「お金の貯め方」を学んだほうがいい人もいます。
「貯め方がわかってきたから次は増やし方を学んでみよう」などステップアップしていくのもおすすめです。
●信頼できる発信元から情報を得よう
お金に関する情報を発信している個人や団体、企業などはたくさんあります。しかしなかには「誤った情報や虚偽の内容を発信している」「発信者側の利益になる方向に誘導するために情報を流している」といった人もいます。トラブルを避けるには、すべての情報を鵜呑みにするのではなく一歩引いて見ることも大切です。
自分で情報の正確性を確かめたうえで自分の頭で考えて判断する習慣を身に付けておきましょう。それが難しい場合は、公的機関や頼れる専門家など信頼できる発信元から情報を得ることが重要です。
●机上の勉強だけでなく実践も大切
お金の勉強をして知識を身に付けたと思っても実践できなければ意味がありません。「知っていること」と「できること」は、別物です。本や動画などで学んだあとは、それで終わりではなく実際に家計簿を付けたり少額で投資したりするなど実践してみましょう。実践して初めてわかることもあります。
再起できないような大きな失敗は避けたいところですが、小さな失敗を繰り返しながら試行錯誤していくことは実践的なよい学びになるでしょう。「学ぶ→実践する→振り返る→改善する」といった流れを作るのが理想的な状態です。
■まとめ
お金について学ぶことは、不安やリスクをやわらげ将来を明るくすることにつながります。近年は、無料で得られる情報も充実しているので本や動画など自分に合った方法で学びを深めることが可能です。
難しく考えすぎず、まずは気軽に学べる方法から試してみてはいかがでしょうか。そのうち「何をもっと学びたいのか」「どうやって学ぶのが自分に合っていそうか」が明確になってくるでしょう。
ある程度の知識を得たあとは、それをもとに実践し試行錯誤しながら学んでいくことも大切です。少しずつ無理のないところから始めて、楽しみながら学びを深めていきましょう。